ウィトゲンシュタインとヒトラー
巻頭言を Ludwig Wittgenstein の「論理哲学論考」の忘れ難い終章に変えた。A型肝炎で一月の入院を余儀なくされた、20年前の夏、僕はベッドの上で、正直、半理解もしていなかった難解な論理記号を用いたこの著作を、分からぬ乍ら、何度も読み耽った。
Ludwig Wittgenstein と Adolf Hitler は同い年である。同じリンツのレアルシューレ(技術工科学校)に最低でも1903年から翌年にかけての1年間、同じ空間にいたことは間違いない。
実際に、二人が写っている集合写真を、それがヨーロッパで発見報道された10数年前、僕は、旅先のミラノのホテルのロビーの、読めないイタリア語の雑誌に見出した。――
何か衝撃的であったことを覚えている――そこには、確かに、どちらもちょっと淋しそうなウィトゲンシュタインとヒトラーが……ウィトゲンシュタインは掛け値なしの美少年、ヒトラーは……一枚の写真の中に居た――
ウィトゲンシュタインはユダヤ系の家系である――
ユダヤ人絶滅計画を実行したヒトラーに、実はユダヤ人の血が流れていたという説、勿論、ご承知であろう――
ヒトラーが六芒星を縫い取ったユダヤ人のみでなく、同性愛者にピンクのトライアングルを刻印し、ゲットーへ送り、絶滅を命じていたこともご存知のこと思う――
ウィトゲンシュタインが同性愛者であったことは、言わずもがな――
最後に、そうして、近年の研究の中、実はヒトラー自身が同性愛者であった事実が浮上しつつある――
不思議な皮肉な交差、ではないか――

