生物クイズ解答
教え子から早速に「生物クイズ」の回答が、複数、寄せられた。幾つかを拾うと、ある女性は(1)に、
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ムカデは意外と目立ちたがり屋、で不意に部屋の隅に出てくる
都会でも暮らせるくらい適応能力が強い
ゲジゲジははずかしがり屋、でたまたま動かした家具の後ろの壁にくっついてる
田舎でしか暮らせないくらい適応能力が弱い
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都会と田舎の差別化は、近代的ですこぶる面白い。町の鼠と田舎の鼠の昔話を髣髴とさせた。また、ある理系の男性は、(2)に、
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存在しない。
通常ありそうなモノに「存在するか?」という問題がでたら、出題の意図を考慮して、まず「存在しない」と答えてみます。
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これは周知の通り、正しい解法の一つではある。勿論、即ち、正答だ。彼は同様の解法で(3)も存在しない(これも正答)としながら、答えが陳腐に流れるのを以下のように救っている。
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ミノムシという虫は存在しない、ということにしたので、ミノムシの“ムシ”は昆虫ではなく、「弱“虫”」の虫のようなものだと考えてみます。ではミノはなんなのか、というと、隠れミノの“ミノ”だと予想出来きるので、全身を木のクズで覆い、姿を隠すその行為や姿の名称がミノムシということになります。つまり一生ミノムシのままでいるミノムシは何ものか、というと「そいつは弱虫」ということです。
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座布団一枚! メール本文の無断借用は陳謝。でもこれらは、僕のブログを面白くしてくれた。では、やぶちゃんがお答えしよう。
(1)
節足動物門の唇脚綱(ムカデ綱・多足類等ともいい、その体制から当然「昆虫」ではない)に属するゲジゲジ(厳密な和名はゲジ。ゲジ目として綱の下位でムカデ目と独立している)とムカデの人間生活の関わる決定的相違点は、「衛生害虫」としての認識の是非であろう。
一般に、ゲジゲジは、家屋内にあって、衛生害虫であるクモやゴキブリを捕食するところから、多くの図鑑類では「人に害はない益虫」と誇らしげに記されている。しかし、屋内でのムカデの捕食行動もそう変らない(但し、種によってムカデの方が採餌対象にかなりの特化が認められる。要するにエサの好き嫌いがはっきりしているということ)であるから、本来ならムカデも益虫とすべきところであるが、特に俗称ハガチなどという、大型のアオズムカデやトビズムカデなどによる咬症が、相当に痛く、腫れも強いこと、形状から布団内や衣服の間等にも侵入しやすいことから、立派な「衛生害虫」の仲間入りをしているのである。
大型のゲジゲジも、咬まれれば相応に痛いわけで(毒腺は当然ある)、考えればムカデにほぼ一方的な汚名であるとも言えよう。僕は、容易に切れる脚が蠢くのをみると、文字通り、虫唾が走るが、あなたは如何?
なお、ゲジゲジは陰陽道と、ムカデは金属精錬の技能集団と民俗学的な関わりあることは頓に知られているが、それはまたの機会に譲ることとしよう。
ちなみに、彼らは温水に弱い。好きな句に、橋本多佳子の
百足蟲(むかで)の頭(づ)くだきし鋏まだ手にす
があるが、一撃で頭部を砕くのは、至難の業だ。さいばしでつまんで、ぬるま湯(そんなに高温でなくてもよい)の盥に放り込めば、速やかに昇天してくれる。但し、特に大型のムカデの場合、そのお湯には触れない方が無難だ。僕は、かつてしっかりかぶれた。
それにしても、不思議なのは、僕自身。僕は、勿論、蚰蜒(げじ)も蜈蚣=百足(むかで)も、教材に出てくる安部公房の「日常性の壁」ではないが、感電的なショックを受ける口なのであるが、似たような形状の海の環形動物には、いたって生理的嫌悪感がない。ゴカイは勿論、イソメもイワムシも平気だ。ゴカイの一種であるパロロは、南の島で食用とされ、牡蠣のように美味と聴く。一度、食べてみたいぐらいだ。
実は僕は、これで大の昆虫「嫌い」であることを暴露しておく。しかし、生物学の「知」は「別腹」なのだ。シャーレの中のムカデはかわいいもんだ。
(2)
シャクトリムシという種は存在しない。これはすべて鱗翅目シャクガ科の蛾の幼虫である。但し、シャクガは非常に種類が多い(「世界大百科」によれば、国内だけで800の既知種、世界では数万種とある)。
ショクトリムシは別名ドビンワリともいう。種類によるが、大型の幼虫はちょっとした木の小枝の長さと太さを持つ。農夫が水を入れた土瓶をかけようとして、尺取虫に引っ掛けてしまい、パリン、というわけだ。所謂、擬態である。僕も、実際に見たことがあるが、本当に木の枝と全く見分けがつかない美事なものだ。
(3)
ミノムシという種は存在しない。あれも鱗翅目ミノガ科の蛾の幼虫、または、雌である。「または雌」=「一生ミノムシのままでいるミノムシ」(厳密には羽が退化した成虫)ということになるのである。これはウーパルーパのような幼体成熟(ネオテニー)と言ってよいのかどうか、成体の雌を親しく観察したことがないので留保しておく。
ちなみに、回答の一つにあった「蛾になるより身の危険が避けられると思う個体がそうする(しかし、それでは種の保存に反する?)」という疑問は杞憂である。ミノムシ状の雌はちゃんと雄を誘引するフェロモンを出し、交尾をする(種によってミノの外に出てくるものと中にいるものがあるらしいが、卵は大方ミノの中に産卵するようだ)。
「枕草子」の「ちちよ、ちちよ」と蓑虫がなくというのは、民俗学や古文献からの文学的研究の手法(そういう文献は読んだことがある)ではなく、古典生物学とでも名づけて、実際的に「ちちよ、ちちよ」と鳴いたのは、ほかの如何なる生物だったのかを、地道に追求してみたい。

