冬と手紙と 芥川龍之介
芥川龍之介の「冬と手紙と」を正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・随筆篇」に公開した。「二 冬」に現れた毛虫のエピソードは、「城崎にて」を容易に想起させるが、そんなことは僕の興味の対象ではない。
ここで相手になっている娘のM子というは、実はM子の母として設定されている、松村みね子であろう。この作品は、「一 手紙」同様、巧妙に人物が虚構化されている。
僕には、このもととなったであろう、松村みね子とのシーンが鮮やかに浮かんでくる。そこでの、芥川龍之介の視線は、後に「一人」になってしまったみね子の、あの黒猫を見、と井戸を覗く視線と美事にだぶってくるのである……。