萩原朔太郎 對話詩・劇詩 六篇
昭和五十一(1976)年刊の筑摩書房版全集第五巻に於いて、「對話詩・劇詩」として総括された、「魚と人と幼兒」「櫻の花が咲くころ」「魔法使ひ」「ぬけ穴」「ウオーソン夫人の黒猫」「日清戰爭異聞(原田重吉の夢)」の六篇を正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・評論・随筆篇」に一挙に公開した。「ウオーソン夫人の黒猫」「日清戰爭異聞」は優れた幻想小説であり(前者は「猫町」に結実する一実験として、後者はすこぶる映像的カリカチェールに富んだ構成が)、「ぬけ穴」は、完全なものが残っていれば、「猫町」に次ぐ清新な迷宮小説となっていたであろう。惜しまれる一篇である。平明な児童文学の体裁をとりながらも、「魔法使ひ」のオチは一読、慄っとする。