「袈裟と盛遠」他 草稿追加
今日はおぞましくもこれから仕事をせねばならぬ。とりあえず、芥川龍之介の「袈裟と盛遠」、「澄江堂雜記」〔僕が(2)と呼称したもの〕、「貝殻」の三篇に草稿を附して、今日の新味とは致そう。
特に、「袈裟と盛遠」の草稿は、断片ではありながら、極めて興味深いものである。母である衣川に袈裟の奪取を強要する盛遠の鬼気迫るシーンなのであるが、ここでは脚本風の対話形式が採用されている。それが、モノローグ構成という大幅な変形がなされたのは、とりも直さず、昨日僕が述べたような、芥川自身の私的内実の表明要求が存在したからに他ならないと僕は思うのである。