芥川龍之介 飜譯小品
芥川龍之介「飜譯小品」を正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・評論・随筆篇」に公開した。これも僕が落としていたアフォリズムである。これが「翻訳」という名目を借りた、芥川龍之介のアフォリズムの一環であることは、一読、分明であろう。特に「三 鴉」は、後の遺稿「十本の針」の「三 鴉と孔雀と」に呼応する。
三 鴉と孔雀と
わたしたちに最も恐ろしい事實はわたしたちの畢にわたしたちを超えられないと云ふことである。あらゆる樂天主義的な目隱しをとつてしまへば、鴉はいつになつても孔雀になることは出來ない。或詩人の書いた一行の詩はいつも彼の詩の全部である。
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閉塞した左耳は、今日、セカンド・オピニオンをとって再度精検をした。しかし、やはり耳鼻咽喉学的には問題はないという。しかし、この左前頭葉辺りにジーンと唸る音は、一体、何だろう。それは超自然の天啓か、黙示録的な鴉の警告か、はたまた心気の滑稽か……それにしても、「閉塞」という語感は実に、いい。啄木も自作に素敵な題名をつけたものだな等と、今更に、妙な感心をした。何とも言い難い脳内の音響を聴きながら……。