芥川龍之介「奉教人の死」参考資料 斯定筌著「聖人伝」より「聖マリナ」
芥川龍之介「奉教人の死」参考資料として、斯定筌( Michael Steichen 1857-1929 )著「聖人伝」より「聖マリナ」を正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・評論・随筆篇」に公開した。
僕はこれが「奉教人の死」の原典であることを疑わない。芥川龍之介が二重に読者を欺いたのは、彼らしいし、僕はそれが「奉教人の死」という創作世界の『戦略』であったと思う。それに対して腐った倫理的是非を云々するのは、腐りきった文学研究者の仕事に任せることとしよう。
しかしながら、僕は、今日一日を潰したこの孤独な仕事に、それなりの満足感を持っている。かつて、熱心な「文学研究」青年ではなかった(今もそうでは、ない)僕は、噂に聞く原典を読んでみたいと思いながら、この年になるまで、「聖マリナ」を披見することはなかった。高校生や、「僕のように」不精な学生が、僕のこのテクストで「聖マリナ」を読む時、その彼等は高校生であった、そうして、不精きわまる学生であった僕自身となる。素朴にして激烈な共感である。