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2007/02/28

緑の子らへ1 村上昭夫 愛さねばならない

あと二日で君たちの僕が送るべきだった卒業がやってくる。

僕は何も言う資格がないことは分かっている。

済まなかった。

僕もこのおぞましい面を下げて、平然と君たちを送る場に、のこのこ出て行くことが出来るほどには鉄面皮ではない。

僕は少し離れたところにいるが、心は君たちを送る思いで一杯だ(これは僕の人生の中で多分、数少ない誰にも表明したことのない驚くべき正直な気持である)。

まず、君たちに朗読したかった詩を、贈ろう――

愛さねばならない   村上昭夫

この広い世界の何処かの

何処かにいるその人を

私は愛さなければならない

 

私が叫びようもなく叫んだ時

叫びもどしようもない私の叫びに

答えてくれたその人を

 

私が凍えた暁の野を歩んでいた時

捕らえようもない私の悲しみの前を

私よりもいち早く行ってくれた

その人を

 

ああ億万年を深く鋳込まれた星座のなかから

遠い私の記憶を捜し出すように

失われてしまった

私を思い出すように

 

今はげしくむせび泣きをしながらも

私はたった一人のその人を

愛さなければならない

……ディヌ・リパッティのBachのコラール前奏曲ハ短調……

……タルコフスキイの“SOLARIS”……

……「私はそれほど軽薄に思われているんですか。それほど不信用なんですか」……

……「あなたは本当に真面目なんですか」……

……「よろしい」……「話しましょう。私の過去を残らず、あなたに話して上げましょう。その代り……。いやそれは構わない。」……

……木犀の香りがする僕の、淋しくも美しい君らとの夢が、そこには、ある……

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