芥川龍之介「侏儒の言葉」続篇 草稿 「一 ある鞭」及び「二 唾」
芥川龍之介「侏儒の言葉」(やぶちゃん合成完全版)に『(「侏儒の言葉」続篇 草稿 「一 ある鞭」及び「二 唾」』を正字正仮名で追補した。その「二 唾」に芥川は云う。
二 唾
僕は嘗かう書いた。――「全智全能の神の悲劇は神自身には自殺の出來ないことである。」恰も自殺の出來ることは僕等の幸福であるかのやうに! 僕はこの苦しい三箇月の間に屢自殺に想到した。その度に又僕の言葉の冷かに僕を嘲るのを感じた。天に向つて吐いた唾は必ず面上に落ちなければならぬ。僕はこの一章を艸する時も、一心に神に念じてゐる。――「神の求め給ふ供物は砕けたる靈魂なり。神よ。汝は砕けたる悔いし心を輕しめ給はざるべし。」
これより僕は僕の孤独へ再び立ち戻ることにしたい。
……いのさん、暫くのお別れの曲は、Kenny Dorhamの「静かなるケニー(quiet kenny)」から“Alone Together”だ……