ひぐらし
まさにひぐらしの耳鳴りである。あの蜩の声ならまだ許せるが、これともうずっと付き合うのかと思うと耳に錐を突っ立てたい気さえする。頭が重く、歩く時も妙に不具合がある。耳を押さえながら、最後の試験を採点する。
それでも、今日、小論文を見てきた看護や医療系志望の子供達が、何人も志望校に合格した。嬉しい限りだ。今年、僕が個人的に見てきた20数人のうち、残る国立後期一本で戦う三人以外は、幸い合格していない子はいない。堅実な一橋大志望の子の指導も今日、終わった。明日の東大志望の子の小論文指導で、最後である。みんな、本当に最後の最後まで、よく食い下がった(僕が悲鳴を上げるほどにだ)。その成果は出ているぞ! きっと出る!
夕刻、明日の芸大の面接試験のためにシュミレーションをして欲しいと来た生徒と、「音のかたち」(今年の芸大楽理の小論文題である)という命題について議論をしながら、横浜駅までふらふらしながら歩く(彼にはこのふらふらは黙っていたが)。それはギリシャの学堂での議論のように形而上的だった。――僕は、この黒雲を頭部にかかえたような憂鬱を、その一時一瞬、忘れることが出来たのである。
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