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2007/03/01

緑の子らへ2 村上昭夫 航海を祈る

航海を祈る   村上昭夫

それだけ言えば分ってくる

船について知っているひとつの言葉

安全なる航海を祈る

 

その言葉で分ってくる

その船が何処から来たのか分らなくても

何処へ行くのか分ってくる

 

寄辺のない不安な大洋の中に

誰もが去り果てた暗いくらがりの中に

船と船とが交しあうひとつの言葉

安全なる航海を祈る

 

それを呪文のように唱えていると

するとあなたが分ってくる

あなたが何処から来たのか分らなくても

何処へ行くのか分ってくる

あなたを醜く憎んでいた人は分らなくても

あなたを朝焼けのくれないの極みのように愛している

ひとりの人が分ってくる

 

あるいは荒れた茨の茂みの中の

一羽のつぐみが分ってくる

削られたこげ茶色の山肌の

巨熊のかなしみが分ってくる

 

白い一抹の航跡を残して

船と船とが消えてゆく時

遠くひとすじに知らせ合う

たったひとつの言葉

安全なる航海を祈る

(1999年思潮社刊「村上昭夫詩集」より)

注:第4連目は改ページの頭になっており、組版では一行空きではないが、僕の判断で、一連ととった。

この詩が、上記詩集の掉尾(追記:これが詩集最後の詩)となっているのは象徴的に見えるが、しかし、彼の詩は、そのどれもが、「最期」を意識した、搾り出された一編である。
これは確かに、辞世であって、辞世ではない。
1968年の今朝(追記:10月11日)、午前6時57分、肺結核と肺性心の合併症と長期に及んだ闘病生活による全身衰弱で、村上昭夫は亡くなった。
彼は詩稿ノートを人に見せるのが好きだったという。こうして、引用することを、彼は、きっと喜んでくれるであろう。

*   *

以上は実は 2005/10/11 03:16 のブログの再録である。原文の一部に致命的なミスがあったので訂正して、元のブログを消去し、ここに新たに掲げる。

僕は君らの卒業式に電報も何も打たないことに決めた。
僕にとって君らの晴れの式場に日の丸や君が代がいらないのと同じように、そんなものは君たちにはいらない。
同様にそんなものがあのけち臭い職員室の入り口に張り出されるのも、僕自身が御免被るからだ。
当然、このおぞましい裏切り者である僕は、速やかに君らの記憶から忘れ去られるべき存在である。
まさに君らの卒業式から僕の存在は日の丸君が代同様、綺麗に払拭されるべきである――

しかし――僕を忘れない少数の誰かが居るとして――このページを覗いてやろうという奇特な誰かが居るとして――その数少ない誰かのために、僕は、心から「おめでとう!」を言おう。僕の人生の中の数少ない「権利」として――

だから――
「僕はどうにも、今、この時に、この詩を、君たちに贈らずにいられなかったのだと思って下さい。」

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