芥川龍之介「新緑の庭」「春の日のさした往來をぶらぶら一人歩いてゐる」
芥川龍之介「新緑の庭」及び「春の日のさした往來をぶらぶら一人歩いてゐる」のニ作品を正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・評論・随筆篇」に公開した。前者は一読、ルナールの「博物誌」の“Au Jardin”の剽窃であることが分かる。後者の観察も、ルナールの視線そのものであると言ってよい。かつて僕は、岸田国士が芥川龍之介(死後)のルナールの剽窃を微妙な友情をもって評しているのを読んだ記憶がある。一人芥川龍之介のみの恥ではない、日本の文学の不幸であると言ったかわし方であった。しかし、このようなあからさまな作品を見る時、岸田の評言に甘さを覚える。実際に、「博物誌」を知っていてこれらを読む時、ある苦いものを感じざるを得ないのである。