ガウディとの再会
昨日、湯治の帰りに、小田原市街の旧街道を歩く。古い看板や町並みを再現保存したそれは、何か素敵に懐かしい。
昼食に立ち寄ったスペイン料理トマスは、一言、旨い。マラガで修業したシェフのこだわりと、その一聞くと十返って来る薀蓄も、本場スペイン並みの天井の高さや、本場のタイル画、風車に立ち向かうドンキホーテのタペストリーのあるここでは、何とも心地良いのだ。辛口のサングリアからして、絶品!
……窓際の、何気ない大理石に張り付いた金属製の鳥のオブジェに、惹かれた。シェフに聞くと、にんまりとして、「誰のものか分かりますか?」と聴かれた。ミロですかと答えると、スペインの有名な建築家(ここでシェフ、またにんまり)……ガウディ!!!???
サグラダファミリアが資金難で建築が滞ったことがあったのは知っていた。その時、日本に三本の作品が合法的に持ち込まれたというのも、聞いた記憶がある。その内の一本、が確かに、ここにあった!
シェフの好意で持たせてもらった。止まり木のたった細い一本の支えで台座の大理石に絶妙なバランスで立っている鳥――その背後にはごつごつとした大理石の原石が続いているのである。残念なことにその背後には、さらに巨大なあのサグラダファミリアの尖塔を髣髴とさせる大理石が、鳥の尻尾のようにそそり立っていたのだが、これはお客が不用意に触れた結果、折れてしまったという……
……懐かしい過去の町並み……ガウディとの再会……至福の一日……これを見るだけでも充分だ。騙されたと思って、お訪ねあれ。但し、サングリアのデキャンタだけで4500円、相応のお覚悟は必要。
追伸:教え子から「サグダラ」はないだろ、ときた。その通り! El Temple Expiatori de la Sagrada Família 聖家族贖罪教会。しかし、僕にとっては、まるで「サグダラ」……「マンダラ」だった。まあ、いいや、あのグエル公園の回廊の力学構成を考えれば、あれはマンダラならぬサグダラ、かも知れん(苦しい洒落だ!)。……さても、建築家の別の教え子が、トマスのガウディは、知る人ぞ知る有名所なのだと一報をくれた。今度、その彼とあそこで、飲みたいな。あの、ガウディを、テーブルに据えて。
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