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2007/06/01

人生の楽園

僕の父は前立腺癌である(ステージB1)。僕の母方の祖父は前立腺癌で亡くなった。僕の母は直腸癌で手術をし、人工肛門である。僕の父の男兄弟は二人とも胃と大腸の癌を手術している。僕の母の亡き姉は子宮癌の罹患歴があった。最後に、とどめだ、僕の母方の祖父の妹が僕の父方の祖母である。即ち、僕の両親はいとこ同士である。父の告知の際、僕は最後に、以上の事実を挙げて、医師に「僕の発癌リスクは高いですよね?」聴いてみたのだ。それまで、どうなることかと心配していた父に、おだやかな口調で、予想外に軽かったことを、それでも真面目に話していた医師が、その時、にやっと笑った。そうして「あなたはお幾つですか?」と問い返した。「50です」と答えるや、またにやっと笑って「PSAの検査をお受けになることをお薦めします」と答えた。

それでなくても僕は、幼少期の結核性カリエスの多量のレントゲン撮影の為に、通常人の数倍の放射線を浴びてもいる。アルコールの摂取も過剰であり、すでに糖尿病である。右腕は特殊型コーレス骨折で80%しか復活しておらず、最近では左耳の耳鳴りも激しくなり、両耳共に聴力が減衰した。

僕が今後十年以内に癌に罹患するリスクは想像以上に高い。あと十年、僕が仕事を続けても、僕に第二の「人生の楽園」など、ないと考えるのが自然である。その頃には、僕はしたいことをするのではなく、毎日を治療にいそしむことになるのがオチである。

さて、僕はこの着実に右傾化し、非人間的上意下達(「かたつ」だよ!)構造を強化し、学歴偏重による差別化を当然のように認めている僕のいる現場が、そうしてそれにつながるこの日本というおぞましい国家自体が、最早恐ろしく苦痛である。子供たちは、大好きだ。教えたいことも、話したいことも、やりたいことも、モーツアルトほどじゃないが、「ここ」(僕、指で頭を指す)、にある。しかし、この、この「夜の果て」は、虫唾が走るほどの生理的嫌悪感以外の何ものでもない。僕はその沼の瘴気に魂を冒され、加えて身体もぼろぼろになって(勿論、そこには僕自身の不摂生という責任問題は当然あるが、しかし、それはストレスという点で、現実と無関係ではない)、なお且つ、「ここ」に、僕はいなくてはならないのだろうか? 僕には、全く、分からない。何も、わからない。

……妻は、毎週、民放の「人生の楽園」を見るのを楽しみにしている(おかげで僕の好きな「週間子供ニュース」は見られなくなった)。僕は、いつも、僕にあったかも知れない、しかし、もう決して在り得ない「人生の楽園」を、そこに、見る気がしている。

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