淡路にて 伊良子清白
淡路にて 伊良子清白
古翁しま國の
野にまじり覆盆子摘み
門に來て生鈴の
百層を驕りよぶ
白晶の皿をうけ
鮮けき乳を灑ぐ
六月の飲食に
けたゝまし虹走る
清涼の里いでゝ
松に行き松に去る
大海のすなどりは
ちぎれたり繪巻物
鳴門の子海の幸
魚の腹を胸肉に
おしあてゝ見よ十人
同音にのぼり來る
*[やぶちゃん注:以下、底本準拠総ルビ。]
淡路(あはぢ)にて 伊良子清白
古翁(ふるおきな)しま國(くに)の
野にまじり覆盆子(いちご)摘(つ)み
門(かど)に來(き)て生鈴(いくすゞ)の
百層(もゝさか)を驕(おご)りよぶ
白晶(はくしやう)の皿(さら)をうけ
鮮(あざら)けき乳(ち)を灑(そゝ)ぐ
六月(ぐわつ)の飲食(おんじき)に
けたゝまし虹(にじ)走(はし)る
清涼(せいろう)の里(さと)いでゝ
松(まつ)に行(ゆ)き松(まつ)に去(さ)る
大海(おほうみ)のすなどりは
ちぎれたり繪巻物(ゑまきもの)
鳴門(なると)の子(こ)海(うみ)の幸(さち)
魚(な)の腹(はら)を胸肉(むなじゝ)に
おしあてゝ見(み)よ十人(とたり)
同音(どうおん)にのぼり來(く)る
*
……この詩、まるで青木繁の「海の幸」の絵を髣髴とさせる、不思議なイメージだ(以下の画像は大きいので右が切れる。一度デスクトップ等に保存してから、全体像を見られたし)。