花柑子 伊良子清白
花柑子 伊良子清白
島國の花柑子
高圓に匂ふ夜や
大渦の荒潮も
羽をさめほゝゑめり
病める子よ和の今
窓に倚り常花の
星村にぬかあてゝ
さめざめとなけよかし
生をとめ月姫は
新なる丹の皿に
開命貴寶を盛り
よろこびの子にたびん
清らなる身とかはり
五月野の遠を行く
花環虹めぐり
銀の雨そゝぐ
*[やぶちゃん注:以下、底本準拠総ルビ。]
花柑子(はなかうじ) 伊良子清白
島國(しまぐに)の花柑子(はなかうじ)
高圓(たかまど)に匂(にほ)ふ夜(よ)や
大渦(おほうづ)の荒潮(あらじほ)も
羽(はね)をさめほゝゑめり
病(や)める子(こ)よ和(なご)の今(いま)
窓(まど)に倚(よ)り常花(とこはな)の
星村(ほしむら)にぬかあてゝ
さめざめとなけよかし
生(いく)をとめ月姫(つきひめ)は
新(あらた)なる丹(に)の皿(さら)に
開命(さくいのち)貴寶(あで)を盛(も)り
よろこびの子(こ)にたびん
清(きよ)らなる身(み)とかはり
五月野(さつきの)の遠(をち)を行(ゆ)く
花環(はなたまき)虹(にじ)めぐり
銀(しろがね)の雨(あめ)そゝぐ