柴田昌平「ひめゆり」についての追記2
映像の中で僕がいささか不審に思ったことがある。
生き残った「ひめゆり」の人々が、そのかつての惨劇の最期の場に赴くのに、如何にもちゃんとした服装をしていることだった。
それは映画だから? 違うことは確かだった……
珊瑚礁のナイフのような岩礁を(僕は完全装備で二年前に真鶴の岩場で右腕を粉砕した)、雑草が生い茂げるハブの出そうな壕の入り口を、地下水と泥と闇の鍾乳洞のぬかるんだガマを、彼女たちは如何にも歩きにくい少しヒールの高い靴で……それをカメラは少し見るものに退屈なほどに、撮る……
……しかし、それは監督の挨拶の言葉で分かったのだ……
……それはあの時亡くなった化粧も着飾ることもなかった同級生の少女たちへの、彼女たちの、せめてもの、「化粧」だったのだ……