柴田昌平「ひめゆり」についての追記1
上映後、柴田昌平氏の挨拶あった。その中で僕の感じたことを語りたい。
彼が元務めていたNHKにこの映画の製作を持ちかけた。
ソノヨウナモノヲ作ル予定ハ今ノトコロアリマセン
きっと多くの人は思うだろう。このような証言ドキュメンタリーなんて、とっくにいくらでも、あるだろうと。
しかし、彼が創らねばならないと思ったのは
それが ない という意外な事実
なのだ。彼が実に十数年をかけて(彼はまさに30代のすべてをこの撮影にかけた)この映像を撮らなかったら、と僕は考える。
彼はひめゆりの「死んだそして今も生き残されている少女たち」と「今しかないこの瞬間」に確かな交感をした稀有な映像作家なのだ
ということに僕らは驚懼せねばならない。何もせずに何もかも忘れて「最早戦後ではない」という言葉に自身を麻痺させてきた僕らは。