「ひめゆり」の少女
この映画で、唯一一瞬、演者によって創られた画像がある。オープニングのひめゆりの塔の記念館の、あの写真の部屋の後姿の女学生である。そうして、その少女は沖繩の海と空の「美しい」ポスターにも立ち現われる。僕は、当初、正直に言うと、この宣伝媒体としてのポスター・スチールや、その冒頭演出を快く思わなかった。それは、一瞬のプロローグの演出や集客のための手段であったとしても、すこぶる安易な感傷――芥川龍之介風に言わせてもらえば陳腐なサンチマンタリスムとして――僕に違和感を感じさせるものであったから……。
……しかし、それは大いなる誤りであった。
今日までに、僕のブログを読んだかつての教え子の少女が、二人、「ひめゆり」を見たとメールをくれた。そうして心から打たれた……と。
僕は、今、分かる――あなたは、この「ひめゆり」の「少女」なのだ――
――見学者や観客ではない――
確かに あなたは「ひめゆりの少女」なのだ――