春の雲 増田晃
春の雲 増田晃
蠟雪がまだらに殘つてゐます
どうだんの赤い芽が
灯(ひ)を点じたといつても
春の寂しいためいきは硝子窓にくもります
こひびとよ あの蠟色の空に
ほら さびしい雲が浮いてます
[やぶちゃん注: 「蠟雪」は「らふせつ」と読み、本来は中国で陰暦12月に降る雪を言う。漢方では万能の解毒剤とし、これで茶を煎じたり粥を煮れば解熱や喉の渇きを止め、これに食物を浸して貯蔵すると虫害を防ぐともいう。日陰で密封し保存すれば数十年間使用可能とする。ここはしかし、降って残っている雪の表面が解けてまた凍り、見た目が蝋が溶けたような状態になったものを言うのであろう。後の「蠟色の空」(夕暮れの焼けた紅い空を「紅蠟」=赤い蝋燭に比したか。なお「紅蠟」については、次の詩「その日」の注を参照されたい)でも用いられるように、増田は「蠟」という語自体を自身の詩語として好んだように思われる。
・「どうだん」はツツジ科のドウダンツツジ。]

