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セレナーデ 増田晃
郊外電車のまどぎはに 疲れてよりかかつてゐると、 すぐそばに優しい歌聲が聞えた。 女の子が三人肩をよせて、 窓からふきこむ春めいた風に 愛くるしい髪をふかせながら、 たのしさうにセレナーデを口ずさんでゐた。
その愛らしい心になごむ春風、 マリアよ、三人の少女(をとめ)のうへに光あれ。 私はなみだぐみながら いつまでも寂しい曲をきいてゐた。 そしていつとなく微笑みつつ 明るいのぞみを抱きしめてゐた。