セレナーデ 増田晃
セレナーデ 増田晃
郊外電車のまどぎはに
疲れてよりかかつてゐると、
すぐそばに優しい歌聲が聞えた。
女の子が三人肩をよせて、
窓からふきこむ春めいた風に
愛くるしい髪をふかせながら、
たのしさうにセレナーデを口ずさんでゐた。
その愛らしい心になごむ春風、
マリアよ、三人の少女(をとめ)のうへに光あれ。
私はなみだぐみながら
いつまでも寂しい曲をきいてゐた。
そしていつとなく微笑みつつ
明るいのぞみを抱きしめてゐた。
*
「詩集 白鳥」 増田晃 昭和21年3月15日 小山書店刊行 より
増田晃[ますだあきら]
大正4年、東京府に生れる。東京帝大の法学部に入学後、中心となって創刊した「狼煙」に詩作を発表し、昭和16年に刊行の「白鳥」で詩壇の注目を浴びた。同18年戦没。
*
教え子の教えてくれた麗しき詩……
そうして、彼の写真……


