雲 増田晃
雲 増田晃
重い洋書を閉づるやうに
薄暮がただよつてくれば
夕濕りの竹の葉かげにたたずんで
青い網を重ねる雲を見よう
殘り明らむひかりのなかに
雲のしづかな漣は重なりあふ
そして鳩の翅のやうに細(こま)かくふるふ
寂しい魚のやうに影を曳く………
青靄がひんやりと冠毛をひいて
灯(ともしび)がその列になつかしくにぢむとき
私の心はゆゑわかぬなみだにふるへて
細かい竹のくらくなつてゆくままに
淡い影をこころ深くうつして
ひつそりとそれにとけあひつつ暗んでゆく………
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雲 増田晃
重い洋書を閉づるやうに
薄暮がただよつてくれば
夕濕りの竹の葉かげにたたずんで
青い網を重ねる雲を見よう
殘り明らむひかりのなかに
雲のしづかな漣は重なりあふ
そして鳩の翅のやうに細(こま)かくふるふ
寂しい魚のやうに影を曳く………
青靄がひんやりと冠毛をひいて
灯(ともしび)がその列になつかしくにぢむとき
私の心はゆゑわかぬなみだにふるへて
細かい竹のくらくなつてゆくままに
淡い影をこころ深くうつして
ひつそりとそれにとけあひつつ暗んでゆく………