雪國のクリスマス 増田晃
雪國のクリスマス 増田晃
娘のマツチが燃えつきたときに
暖い手は娘の冷えたからだを抱いた
煖爐の火や七面鳥は消えたけれど
ちらちらはてしもない歎きは
娘の珊瑚の脣を顫はせてゐた
かげもないあたたかい手に
娘はやさしいその魂を手渡したのであつた
――アンデルセンをよんだ後で
[やぶちゃん注:題名の「クリスマス」の「ス」は痕跡だけで字を成していない。底本としたページの目次で補正した。「煖爐」は暖炉。「珊瑚」はサンゴ。「脣」は「くち」か「くちびる」であるが、ここは後者で読みたい。「顫はせて」は「顫(ふる)はせて」。]
« こひびと 増田晃 | トップページ | 手 増田晃 »