ふぐの卵巣の糠漬
この数週間、身体や仕事上鬱々とすることのみ多く、増田の詩を淡々とテクスト化すること以外に楽しみはなかったが、一つ、大事なことを言わねばならぬことに気づいた。「和漢三才圖會 巻第五十一 魚類 江海無鱗魚 寺島良安」の「河豚」(フグ)の項の注の追加・訂正である。遂に友人が石川の合法製品を入手して、買ってきてくれたのである。更に前の記載の中で佐渡の製品を非合法のように記載した部分があり、それが誤りであることも分かったのでこれは正さねばならぬ。以下に訂正追加部を引用する。
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……しかし私は実は、大分の臼杵でフグの肚を、佐渡でフグの卵巣の粕漬けを、どちらも食している。まず臼杵、これは所謂、公然の秘密という部類の話で、臼杵(調べてみると大分ではというべきらしい。これは伝統的な当地の食い方で、勿論立派な違法行為である。ある種の書き込み等にはまことしやかにキモを食べていいという条例が現地にある等と書かれているが、それは真っ赤な嘘である)では、どのフグ料理店も、数日水に晒して血抜きしたてんこ盛りのキモを(私の食べた店では即物的に正しく激しくてんこ盛りで、なんと食い切れずに残した)醤油に混ぜて、厚切りのフグを頂くのであり、石川県の方法(こちらのものは条例によって認められた合法的な製品だが、異様に塩辛くて多くは食えないと聞く。こちらは残念ながら未だ未食である)と同ルーツと思われる佐渡(★訂正(2007年10月20日):これは新潟県がただ一人、製造を認可している須田訓雄氏による合法的な製品である)のものは、はららごとしてはあっさりとしており、伝えられる石川のもののような塩辛さも全くなく、美味しかった。★追記(2007年10月20日):先週、友人に頼んで石川県の正規合法商品たる「ふぐの子糠漬」を入手、食した。確かに塩辛い、塩辛いが、基、この塩辛さの彼方に、含んだ口中、一時の後、一粒一粒に凝縮している旨味がじんわり広がってゆく。これは、恐らく数少ない珍味中の珍味と言ってよい。佐渡の粕漬に比してずっと塩分濃度が高くなるが、これは全く違った味わいである。比較するものではない。ただ、粒立ちの舌触りの美事さは石川のものに軍配が上がる(私が今回食したのはこちらの製品)。