われは知る 増田晃
われは知る 増田晃
いま散らんとする雛罌栗の花辨(くわべん)に
われは知る アルテミスのこひ
ただとどむすべもなく散りゆくものに
ただとこしへの若さはあれ
ただたよりなく散りゆくものに
ただとこしへの眠りはあらむ
[やぶちゃん注:
・「雛罌粟」はケシ目ケシ科ケシ属ヒナゲシPapaver rhoeas。
・「アルテミス」はギリシャ神話の狩猟と純潔を支配し、産婦や子供の守護をする処女神。生贄としての人身御供を求める神としても知られる。ここで言うアルテミスの恋とは、処女神であるべきアルテミスが愛してしまった羊飼いエンデュミオンとの恋物語を指していると思われる。人間であるエンデュミオンの老いと死の不安に対して、アルテミスは永遠の若さと引き換えに、ゼウスに頼んで彼を永遠の夢の世界に生きさせることとなる。エンデュミオンは永遠に眠りにつきながら、永遠にアルテミスの伴侶となったのである。]