巴旦杏 増田晃
巴旦杏 増田晃
その母は紅い柘榴の一粒を
あやまつて雪にこぼし急に産氣づいた。
かすかな震へが冷いその額に上(のぼ)つたときには
その母はもうあはい瞼に覆はれてゐた。
白い骨になつて埋(う)められたその母のやうに
巴旦杏の實はいつになつても哀しく青かつた。
[やぶちゃん注:「巴旦杏」は「はたんけう」で、バラ目バラ科サクラ属ヘントウPrunus dulcis、アーモンドである。]
« つゆのはれま 増田晃 | トップページ | われは知る 増田晃 »
巴旦杏 増田晃
その母は紅い柘榴の一粒を
あやまつて雪にこぼし急に産氣づいた。
かすかな震へが冷いその額に上(のぼ)つたときには
その母はもうあはい瞼に覆はれてゐた。
白い骨になつて埋(う)められたその母のやうに
巴旦杏の實はいつになつても哀しく青かつた。
[やぶちゃん注:「巴旦杏」は「はたんけう」で、バラ目バラ科サクラ属ヘントウPrunus dulcis、アーモンドである。]