西丹沢の夢又は強制された天使の羽の重量
先週の土曜日、西丹沢のキャンプ地で見た夢。
僕はそのキャンプ地にいる。夜である。沢の奥からワインレッドのケープを羽織った「天使」がしずしずとやってくる。トラック移動しながら(即ち霊のように足を動かさず)私の方へやってくる彼女は、見知らぬ東欧の鼻の高い美人の、だが中年の、「天使」なのである。裸の地面に横たわっっている私の足元に立つと、「天使」はチェコスロバキア語で[やぶちゃん注:以下そうであると夢の中では認識していた。これは今考えると「プルートゥ」の「ノース2号」の「ダンカン」の母親であったような気がするのである。]、こう言う。
「新製品の天使の羽が出来ましたのよ! どうぞ!」
そうして、両手に持った、それを笑顔で差し出すのだ。
僕はシュラフにくるまって金縛りになっていながら、何故か、叫ぶ。
「天使の羽なんか、い、ら、な、い!」
すると「天使」はひどく寂しそうな顔をした後、急に毅然たる面持ちになって、
「いいえ! 天使の羽をいらないなんて、あなたに! 言わせないわ!」
と言い放つと、僕の胸の上に、その純白な、美しい、天使の羽を、トンと置くと振り返って去ってゆく……僕はそれと共に、全く息が出来なくなる……僕は杭を刺された吸血鬼の断末魔の如くに
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」と……
*
……と、その叫んだ自分の声に眼が覚めた。――同僚の先生は気がつかなかった(翌日隣りのテントにいた生徒は確かに聞きましたと言ったのが、恥ずかしい)。
時計を見ると、午前2時、丁度だった……丑満、だあな……