なに、それにゃ及ばないよ
誰かにかれを紹介すると、彼は顔をそむけ、手を後ろから差し伸べ、だんだん縮こまり、脚をくねらせ、そして、壁をひっかく。
そこで、人が彼に、
「キスしてくれないのかい、にんじん?」
と頼みでもすると、彼は答える――
「なに、それにゃ及ばないよ」
(岸田国士訳ジュール・ルナール「にんじん」より「にんじんのアルバム 五」。但し、「キスしてくれないのかい、にんじん?」の「?」は僕の挿入。)
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