耳鳴りの海 蒲生貴弘
耳鳴りの海 蒲生貴弘
みみなりのうみでおぼれたら、すべてをわすれてしまったよ。
いやなことなんてすべてわすれた。
いいことなんて、なかったよ。
みみなりのうみにしずんでく。
さよならをいうあいてがいない。
さよならってつぶやいて、だれにもきいてもらえなくて、ただ、しずむ。
みみなりのうみ、ざつおんのかいすい。さよならをいうあいてもいない。
ただ、しずむ。
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教え子より。僕の好みをよく捉えた絶品だ。ちなみに、彼女はちゃんと、この詩をくれる前に、僕の耳鳴りを労わるメールを送っている。皮肉ではないのだ。お間違えのないように。