芥川龍之介 Gaity座の「サロメ」 + 片山廣子 花屋の窓
芥川龍之介『Gaity座の「サロメ」――「僕等」の一人久米正雄に――』と片山廣子「花屋の窓」を『ペアのものとして』正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・評論・随筆篇」に公開した。
ペアのものとして――
多くを語る必要はない。まずは僕の用意した片山廣子=松村みね子の「花屋の窓」をお読み頂きたい。当然、あなたは芥川龍之介の『Gaity座の「サロメ」――「僕等」の一人久米正雄に――』をお読みになりたくなる。それも僕が用意した、お読み頂こう――そうして、あなたは気がつくであろう、
『山手の坂のあの同じ花屋であることは確かである。妙に嬉しい心もちがしたと作者がいふところで私も妙にうれしくなつて、菊の花の群がつた上に漂つてゐる煙草の煙の輪を、私も見たやうな錯覺さへもち始めた。「夢のふるさと」といふやうな言葉でいふのはまはりくどいが、靜かなおちつきの世界を芥川さんも私もおのおの違つた時間に覗いて見たのであつたらう。』
みね子にとって確かにその花屋の窓こそ「夢のふるさと」であったことは間違いない――違いないが、しかしそれ以上に、彼女がこの龍之介の作品をさりげなく引用したのは――
この龍之介の遺言のエッセイ集ともいうべきものの一篇の彼女の胸を射たものは――
今は亡き失意の龍之介・アントニオ・芥川であり――
人の世のサロメを演じた老いた歌姫、横濱へ流れて来た女優みね子・ハンター・ワッツ・松村夫人であったのだ――
――僕は、確かにそう信じて疑わないのである……
追記:僕は今回のこのオリジナルなテキスト化作業の中で、何故か久し振りに、しみじみとした気持ちになったことを記しておく。
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