タスマニア紀行6《タスマニアで見る3》「タスマニアン・デビルはタスマニアン・ノビルなノダ!」
タスマニア紀行6《タスマニアで見る3》「タスマニアン・デビルはタスマニアン・ノビルなノダ! ゼッタイかわいいノダ!」
コロンとしていて胸元にアクセントがあってアライグマみたような顔をしていて短足で昼間は暑いから穴倉で寝ていて出てきても地べたに足も手もずべ~んって伸ばして腹ばいになって寝ているタスマニアン・デビルはデビルなんかじゃあないノダ! タスマニアン・ノビルなノダ! ゼッタイかわいいノダ!
哺乳綱獣亜綱フクロネコ目フクロネコ科フクロネコ亜科タスマニアデビル属タスマニアデビルSarcophilus harrisii。現生種一属一種。タスマニア島にのみ生息する。絶滅危惧種。現地のスタッフに聞いたところ、タスマニア島南東部には最早自然個体はほとんど生息していない模様で、北部の中・東部での自然個体の総数さえ把握されていない。古くは家畜を襲う害獣として忌み嫌われ(これは冤罪で彼等は腐肉食である)、威嚇・捕食行動の際に出す「シャー!」といった特徴的な声と歯を剥き出した姿からおぞましい名を冠せられてしまった(これも冤罪で極めて臆病な性質であり、威嚇行動は人間と全く同じく一種のハッタリ行動である)。1996年に初めて報告されたデビル顔面腫瘍性疾患DEFD(Devil Facial Tumour Disease)は現在もパンデミックな爆発的感染が続行しており、且つその病理学的素因は確定していない。治療法も特効薬も、ない。一説にウィルス性とされるが、僕は一種の遺伝的な素因があるのではないかと感じる。今、彼らにそのような試練が遺伝的に齎されているのかもしれない。――太古、生きる場所をじりじりとディンゴ(イヌ属タイリクオオカミの亜種Canis lupus dingo)に追われ、近代に至ってヨーロッパの移民に悪魔として忌避され、今また、死に至る病に襲われねばならない存在――肉食動物の食物連鎖の底辺でエクスターミネーターとして文字通り地面にぺったりくっついて地道に生きてきた彼らに、何故に神は試練を与えるか? 「悪魔」と呼ぶか? 僕はだから神の存在など信じないノダ! いや、この「デビル」こそ、哀れな僕等自身の、正しき隣人なのではないか!?……
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