タスマニア紀行3《タスマニアで見る1》「ペンギンの帰還」
タスマニア紀行3《タスマニアで見る1》「ペンギンの帰還」
人工物のゴミが殆んど全く見られない美しいフレシネ国立公園ワイングラスベイをハイキングした、その夜9:30、フェアリー・ペンギンEudyptula minorの帰巣行動を観察した。昼間、海に採餌に行っていた親達が陸に帰って来る(タスマニアのペンギンの95%は離島に生息しており、ここの彼等は、タスマニア本島を居住地とする希少な残り5%の個体群なのである)。僕はこの「ペンギンの帰還」(呼称としては「ペンギン・パレード」と称しているが、僕は断じてこの甘ったるいイベントとしての名を拒否したい。それは日々繰返される彼等の生死を賭けた生きざまなのである)を見るだけでも、このまさに南の果ての島へ来る価値があると感じた。エコ・ツーリズムという謂いも、そうお目出度く理想化するところに独善的な胡散臭い気がするが、ここでボランティアとして働く運転手も老ガイドも灯かり持ちのはにかんだ少年も――その誰もが皆「ペンギンの帰還」を確かに守っていると素直に感じられた。――そうして闇の中に照らされたいたいけな子ペンギンの切ない震えは、将に繁栄めいた絶滅的危機に瀕しつつある奢るホモ・サピエンスの痙攣に繋がっている――
(写真は観察用人口巣の中で親の帰りを待つ二匹のフェアリー・ペンギンの子)
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