“The Land of Heart’s Desire”注補正
芥川龍之介の『Gaity座の「サロメ」』に附した後注のうち、どうもしっくりこなかった“The Land of Heart’s Desire”を以下のように、全面的に書き換えた。僕としては、これなら当たらずとも遠からずか、と考えている。何かもっと正鵠を得た情報や解釈をお持ちの方は、是非、御教授をお願いしたい。
・The Land of Heart’s Desire:アイルランドの詩人・劇作家ウィリアム・バトラー・イェイツ(William Butler Yeats)の、1894年初演の戯曲。「心願の国」等と訳される。私はこの芝居を読んだことも見たこともないので、如何とも言いがたいが(新妻が妖精に誘拐されるアイルランド民話を素材とするらしい)、ここで芥川龍之介は、当時の「僕等」は「心願国」(それはイェイツにとって悲願としての独立国としてのイングランドを意味するのではなかろうか)国旗が税関に翻るのを夢想し「感ずる」程度には素直なロマン主義者であったと言っているのではなかろうか。本作が発表されたのは1925年であるが、その時でさえ未だアイルランドは真の独立を果たしていない。即ち、アイルランド自由国(但し、イギリス自治領。後、1937年にエールと改称)の成立は1922年、イギリスの独立承認は1942年(但し、イギリス連邦の共和国)、晴れてイギリス連邦を脱退してアイルランド共和国となるのは、1949年のことである。
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