円空が仏像を刻んだように 高見順
円空が仏像を刻んだように 高見順
円空が仏像を刻んだように
詩を作りたい
ヒラリアにかかったナナが
くんくんと泣きつづけるように
わたしも詩で訴えたい
カタバミがいつの間にかいちめんに
黄色い花をつけているように
わたしもいっぱい詩を咲かせたい
飛ぶ鳥が空から小さな糞を落とすように
無造作に詩を書きたい
時にはあの出航の銅鑼のように
詩をわめき散らしたい
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注:昭和46(1971)年刊講談社文庫高見順「詩集 死の淵より」を底本とした。なお、底本には「刻(きざ)んだ」及び「糞(ふん)」のルビがあり、ナナの後には『(犬)』が本文に入るが、恣意的に排除した。
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僕は僕の言葉で僕の誰にも読まれない詩を訴えたい気はいつもしている――それはきっと詩には見えないのであるが……いつかきっと僕は君を抱きしめる、安息の代わりに……
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