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2008/04/14

鶯 (一老人の詩) 伊東靜雄

   鶯  (一老人の詩)   伊東靜雄

(私の魂)といふことは言へない

その證據を私は君に語らう

――幼かつた遠い昔 私の友が

或る深い山の縁(へり)に住んでゐた

私は稀にその家を訪うた

すると 彼は山懷に向つて

奇妙に鋭い口笛を吹き鳴らし

きつと一羽の鶯を誘つた

そして忘れ難いその美しい鳴き聲で

私をもてなすのが常であつた

然し まもなく彼は醫學校に入るために

市(まち)に行き

山の家は見捨てられた

それからずつと――半世紀もの後に

私共は半白の人になつて

今は町醫者の彼の診療所で

再會した

私はなほも覺えてゐた

あの鶯のことを彼に問うた

彼は微笑しながら

特別にはそれを思ひ出せないと答へた

それは多分

遠く消え去つた彼の幼時が

もつと多くの七面鳥や 蛇や 雀や

地蟲や いろんな種類の家畜や

數へ切れない植物・氣候のなかに

過ぎたからであつた

そしてあの鶯もまた

他のすべてと同じ程度に

多分 彼の日日であつたのだらう

しかも(私の魂)は記憶する

そして私さへ信じない一篇の詩が

私の唇にのぼつて來る

私はそれを君の老年のために

書きとめた

「私はそれを君の老年のために書きとめた」……こんな剃刀のような、髭を当たる髪床の剃刀のように鮮やかにシュと……ジッツ! と……殺いだ言葉は、なかなか、僕には言い出せないのである……

伊東静雄を知らない? では、僕の「心朽窩」新館の「伊東靜雄全詩集(やぶちゃん版)」へ、よかったら、どうぞ――

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