春は窓いつぱい 尾形亀之助
春は窓いつぱいにあふれてゐる
私は昨日から寝てゐる
頭から蒲団をかぶつて
こんど床を出るまでに彼女との愛をすてなければならない と
私は床の中で自分の不幸を考へてゐる
(何時の間にか私は蒲団から頭を出してゐる)
かなしい春である
*
(日本詩選集 一九二八年版 昭和3(1928)年1月発行)
「恋愛後記」の僕の附言を参照のこと。この吉行あぐりへの恋情は一方的で、無論、失恋に終わる。それだけではなく、この昭和3年、尾形亀之助は3月に妻タケと別居し、5月には協議離婚している(二人の子は尾形が引き取って、長男猟は実家に預け、長女泉は同居した)。ちなみに、この時、タケは、亀之助が同年1月に結成した「全詩人聯合」の最大の協力者であった詩人(後に小説家に転身)大鹿卓(金子光晴実弟)の元へと走っている(その辺りの経緯は正津勉の「小説尾形亀之助」に詳しい)。

