ツルゲーネフ「猟人日記」より二葉亭四迷訳「あひゞき」及び中山省三郎訳「あひびき」
ツルゲーネフ「猟人日記」より、文学史上名高い二葉亭四迷訳による「あひゞき」と、中山省三郎訳による「あひびき」の同一原作翻訳二種を正字正仮名で「心朽窩 新館」及び「やぶちゃんの電子テクスト:小説・評論・随筆篇」(双方から閲覧可能)に公開した。二葉亭の訳には何処か浄瑠璃本のような雰囲気が漂っている。こういう小悪党が文楽にはよく出てくるではないか。太夫の唸りが聞えてくるような気がする。対する中山訳は俄然映画的である。台詞が洗練され、フレーミングがしっかり見える。これを読むと、この原作自体が映画脚本でないこと自体が奇蹟のように思われてくるから不思議ではないか。
僕は秘かに思う――
アクリーナにはグレゴーリ・チュフライ監督の「誓いの休暇」のシューラ役ジャンナ・プロホレンコを、ヴィクトルにはイワン・プイリエフ監督の1968年年版「カラマーゾフの兄弟」で美事なスメルジャコフを演じたワレンティン・ニクーリンを起用したい。
うん? 主人公の猟人ピョトール・ペトーヴィッチ役は? それは勿論、ロシア人に生まれ直した、僕、だよ――