無題 尾形亀之助
枯草は赤く枯れて
上はくろずんでゐた
俺は心細いさむさを感じてゐた
夕方は地べたが空の上へ上つてゆくのだ
暗くなつて燈がともれば
俺のこころにも細々した燈がともり
やみの中にめ入つてゆく
なまぬるい酒を口にふくんで
眼をつぶる
ああ
何処かしら遠いところで
俺のこころは温められてゐる
*
(詩集左翼戦線 大正12年版 大正13(1924)年6月発行)
先に挙げた「俺」もそうだが、この詩の載る「詩集左翼戦線」という、穏やかならざるプロ文詩集風のものは、当時の詩壇の中心集団であった『詩話会』から出版された「日本詩集」に対抗して、尾形が秋山登らと結成した新進詩人グループ集団『日本詩人協会』が刊行したアンソロジーである。尾形亀之助自身、共編者である。

