父の胃の中をつぶさに観察
僕が山に行く前に大立ち回りで救急車で運ばれた父が今日退院するというので、わざわざ休みをとって病院に行く。前立腺からの癌の転移を心配したが、如何にも素直な神経性胃炎ということなのでひとまずは安心ではある。それでも僕は、再度の組織検査を提案していた。「あの」僕の腕の手術に失敗し、そうして手遅れだった「あの」病院で。
主治医の許可を得て、内視鏡検査を最初から最後まで見せてもらった。機材も進歩しているが、父の言うように、実に手際のいい職人気質の医師である。初期の病変写真に較べて、500円玉を越える巨大潰瘍とその脇のやや中型のものどちらも、素人目に見ても有意に改善している(色が違うね)。十二指腸に至っては瘢痕さえも僕には綺麗に見えた。他の小さな潰瘍も修復されている。クリップ状の鋏で5~6箇所の組織片を採取、出血部に消火剤見たような白い散薬を振り掛けて終わり。それにしても、胃カメラも誠に細くなったものだ。テレビでは鼻の穴から挿入するタイプが最近知られるようになったが(今日のものは通常の口腔からの挿入タイプだが、いや細いわ)一昨年教えた僕の教え子の女性はこうした機器の開発をする医工学に進んだが、彼女の話では胃カメラはカプセル型の時代に突入するそうだ。風邪薬見たようなカプセルを飲む。中にカメラが仕込まれていて、回転しながら、消化器系を進み、翌日、排泄されたものを回収、現像するというわけだ。これは、いいね! 今すぐにでも飲んでみたい……という訳で、これだけの術式をしておいて、即退院というのはヘンだぞ……と思い始めた。案の定、検査が終わるなり、医師は、精検結果が出る今週の土曜辺りに退院でしょうという。なんだ! 退院は父の希望的誤解であったのだ。病室で待っていた母は無駄骨――しかし僕は僕なりに、そうそう体験できない内視鏡ワールドや組織採取の実際をつぶさに見れて、実は満足のご帰還であったのだ――
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今朝、「尾崎放哉全句集(やぶちゃん版新版)」の整除を終えた(【同日4:25追記】更にそれに漏れた部分を補った)。後は、夢の正字体全句集だが――お楽しみは、また後で……

