氷國絶佳中休暇 其零 コイン偏愛その他雑感
僕がアイスランドに降り立ってこの國を好きになったのは初日に両替をした瞬間だ――
:タラ目タラ亜目タラ科 Gadidae
:マダラGadus macrocephalusかなあ?
100アイスランドクローナ
:カサゴ目ダンゴウオ科ランプフィッシュCyclopterus lumpus
:この魚卵を擬似キャビアに加工するのだ。
:これが分からん。アメリカのヤフーの質問箱では“shore crab”と答えているのを見つけたが、これは一般的な英名で言うハマガニの外見じゃあない。ハマガニはそもそも南方系であろう……探求中――
:キュウリウオ目キュウリウオ科マロータス属カラフトシシャモMallotus villosus
:英名“Capelin”カペリン。知らない? それは困った。君の食べてるシシャモの殆んどは真正の日本固有種のシシャモ(キュウリウオ科シシャモSpinrinchus lanceolatus。こっちは漁獲量が激減して話にならんくらい高価。カペリンの方は「シシャモ」という和名を戴くが、同科ではあっても近縁種ではない)じゃあ、なくて、彼らを食べてるんだけどなぁ……。
そうして
:獣亜綱真獣下綱ローラシア獣上目鯨偶蹄目ハクジラ亜目マイルカ科Delphinidae
:多分、マイルカDelphinus delphis。今回のホエール・ウォッチングで逢えたよ!
……しかし、ちゃんとした免税店で、この5クローネ硬貨をブローチにしたものを法外な値段(確か1200クローナ位)で側面に小さな輪を溶接してブローチにしたものを売っていたのは、こんな加工していいの? って感じ。これはアイスランドで体験した極めて稀な、唯二つの不快な出来事の一つではあったなぁ
*
ちなみにもう一つの不快は、レイキャビク・グランド・ホテルのウェイターが、頼んだフルボトルのワインを開けて持って来(僕の視線の向こうで抜栓したのは確かに見た)、僕のグラスにだけついで目の前に置いたボトルが、しっかり大胆にもグラス一杯分以上が減っている事実を知ったことである。即座に妻と同席していた別のツアー女性二人がおかしいと言い出した。
補注:僕は言葉が出来ない引け目からこういう時には押しが弱くなる。
――これは自分が誤魔化した分を飲むのでは当然なく、きっと帳簿上フルボトルをグラス要求されたことにしておいて(後の交渉時の言訳にならない言訳と、仕事をしていない時はずっとパソコンの画面を見ているのでおかしなウェイターだとは初めから思った)、その差益をちょろまかそうとしたのだと思う――
さて、添乗員さんを呼んでクレームを付けて
――こんな文脈の中で人を褒めるのも何だが、今回のユーラシアの小黒君は過去の僕のツアー海外旅行中では最高の添乗員だったと言ってよい――
交渉してもらった時のウェイターの油汗で照らついた顏と、第一声の妙に落ち着いた台詞、「ノー・プロブレム」(何がじゃ!?)がその確信を高めた。
勿論、新たに目の前で開けさせたが、妻と僕の分を注がせても、残りはさっきのボトルの中身より多かった! どう好意的に想像してみてもミスの起こりようがない出来事であったし、ウェイターからは何らの謝罪もなかった(分量の減ったボトルは即座に彼が奥に持って行ってしまったのである。これを並べられたら何にも言えなくなったではあろう)。
……その数分後、外国人の別グループの若者二人が二本のボトルを持ってきてやはり彼に声を荒らげて詰め寄り(離れており会話の中身は聞えなかったけれど)、その場で新しいボトルを二本開けさせてを憤然として持ち去ったのを見れば……僕の猜疑は確実であったと言ってよい。
……レイキャビク・グランド・ホテル――いいホテルだが、ワインのフルボトルを頼む時は、ご注意を――
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