「入定の執念」と「木乃伊(ミイラ)の恋」
『入定の執念 「老媼茶話」より』の注で述べた通り、「恐怖劇場アンバランス」の第一話「木乃伊(ミイラ)の恋」(原作・円地文子「二世の縁拾遺」/脚本・田中陽造/監督・鈴木清順 放映1973/1/8)と「入定の執念」の連関が気になっていたが、検索をかける内に、ズバリ正解であることが分かった(私は女流作家が苦手で読まないし、自宅に本作はなかったので)。原作の円地文子の「二世の縁 拾遺」の中にしっかりと登場していることが分かったのである。個人ブログの「まちこの香箱(かおりばこ)」の「宗像教授の中の恵達」という書き込み。嬉しくなっちゃうのは、僕の今回の疑問の入り口となった星野之宣の「宗像教授異考禄 第七集」が同じ出発点となっているところだ。孫引きをお許し頂こう。ちなみに、円地文子の「二世の縁拾遺」という呼称が、上田秋成の「春雨物語」の「二世の縁」の「拾遺」であることに永く気付かなかった僕は全くもって大呆けであった――実は「春雨物語」は大学時代に読みかけて、厭になって放置した。その厭になった理由は読んでいる横から同窓の女性が「貴方が三島由紀夫が絶賛しているこれを読むなんて意外」と言われたからであることもしっかり覚えている――
『博学の先生は秋成のこの物語の原話らしい、『老媼茶話』の中の「入定の執念」という話をしてくれた。それは承応元年に大和郡山妙通山清閑寺の恵達という僧が入定の際、参詣の美女にふと執心して成仏しかね、五十五年の後の宝永三年になっても未だ魂魄散ぜず鉦鼓を叩いていたという話である。
「『老媼茶話』という本は寛保のはじめの序がついているから秋成の子供の頃に書かれたのだろう。しかし何ぶんあの時分のことだから秋成のよんだのは何十年も経ったあとのことかも知れない。『雨月』を書いたころの秋成なら、この物語の美女に執心の残る件をもっと丁寧に描いたろうと思う……」』
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「――いや、宗像教授と同じく、わしもこの話が好きでね……」