暗夜行進 尾形亀之助
自分があてもなく夜の路を歩いてゐるのであつてみれば、街がどんなに広くともどうにもしかたがなかつた。力を入れてゐるのは歩いてゐる足なのかそれとも心のどこかであつたのか、いつの間にか「自分がかうして歩いてゐて踏切のやうなところへ出てそこで死んでしまふ」ことになつてゐるのだつた。
自分がもう小便をやりたくないのはどこかでしてしまつたのだつたらうか。どうしてこんなことになつたのか、とき折り立ちどまつてはみるものゝ、家の近くまで帰つてきて小便をしに入つた露地から何処までもきりもなくつゞいてゐるのだつた。
(門第6輯 昭和4年11月発行)

