メフィラス
サトル君、君はあの時「地球をあげます」と頑として言わなかった――
が、しかしあの頃既に街角の男女は「二人のため♪世界はあるの♪」と嘯いていたではないか――
そして、その二年後に君はゴーゴー喫茶で京都さえ売っていたのだ――
今は、サトル君、君の子の世代だろう。さても、どうかね?――
翻って問おう――宇宙人同志たるウルトラマンよ!
君の戦いは真に報われたと言えるのか?
残虐な殺戮や邪まな犯罪は、正しき少年少女によって無原罪へと駆逐されでもしたか?
――どうした? 黙ってしまったな?
安心し給え。私は「必ずまたやって来る」と約束したが……あの約束は、反故にしよう――
こんな誘惑も詮ない、荒れすさんだ子供らの心に、「地球をあげます」と自律的に言ってごらんなどという誘惑をしかけたとて、如何にも無益ではないか――
何十回も己が母星を破壊できる核兵器を蓄えこんだいかれた神経の宇宙人など、征服し支配する微塵の魅力もないではないか――
ウルトラマンよ、逃れよ、この地上を――そうして、出でよ!荒れすさぶ、荒野へ!
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