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2008/10/05

鷓鴣 イワン・ツルゲーネフ

 鷓鴣

 恢復の望みのない、永わづらひに疲れはてた私は、床についてゐて、考へた。これな何の報いなのか? 何の因果で私は、この私は、こんな罪(とがめ)をうけるのか? たしかに間違つてゐる、間違つてゐる!
 稚い――二十羽ほどの――鷓鴣の一族が、刈株の茂みのなかに群がつてゐた。彼らは互ひに身を寄せ合ひ、幸福さうに、柔らかい土の中を掻きあさつてゐる。俄かに犬が彼らを驚かす。彼らは一せいに飛び立つ。鐵砲の彈丸(たま)が飛んで來て翼を射たれ、すつかり傷ついた一羽の鷓鴣は堕ちる。苦しいながらも足を曳きずつて、苦蓬(にがよもぎ)のしげみに身をかくす。
 犬が探し廻つてゐる間に、この不幸な鷓鴣も、きつとかう思ふであらう、「わたしのやうな鷓鴣が二十羽ゐた、……けれど、なぜこの私だけが、鐵砲に射墜(いおと)されて、死ななければならないのか? 何の報いで、ほかのきやうだいたちの前で、私はこんな憂き目を見るのか? いやいや、間違つてゐる。」
 病める者よ、死の手がお前を探し出さないうちは、横になつてゐるがよい。
   一八八二年六月

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