顔がない 尾形亀之助
なでてみたときはたしかに無かつた。といふやうなことが不意にありさうな気がする。
夜、部屋を出るときなど電燈をパチンと消したときに、瞬間自分に顔のなくなつてゐる感じをうける。
この頃私は昼さうした自分の顔が無くなる予感をしばしばうける。いゝことではないと思つてゐながらそんなとき私は息をころしてそれを待つてゐる。
*
(銅鑼8号 大正15(1926)年月不明)
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なでてみたときはたしかに無かつた。といふやうなことが不意にありさうな気がする。
夜、部屋を出るときなど電燈をパチンと消したときに、瞬間自分に顔のなくなつてゐる感じをうける。
この頃私は昼さうした自分の顔が無くなる予感をしばしばうける。いゝことではないと思つてゐながらそんなとき私は息をころしてそれを待つてゐる。
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(銅鑼8号 大正15(1926)年月不明)