死 尾形亀之助
午前二時
私は眼が覚めた
戸を開けて病院の方を見た
私に飛びかゝりそうないやみな暗みだ
雨が降つてゐる
今夜中そばにゐて下れと云つた
妻
妻が死にかゝつてゐるようである
私の前のふすまを開けて妻が入つて来そうだ
そんなことがあれば妻は死んでゐるのだ
*
(玄土第三巻第五号 大正11(1922)年5月発行)
[やぶちゃん注:「ようである」「来そうだ」はママ。]
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午前二時
私は眼が覚めた
戸を開けて病院の方を見た
私に飛びかゝりそうないやみな暗みだ
雨が降つてゐる
今夜中そばにゐて下れと云つた
妻
妻が死にかゝつてゐるようである
私の前のふすまを開けて妻が入つて来そうだ
そんなことがあれば妻は死んでゐるのだ
*
(玄土第三巻第五号 大正11(1922)年5月発行)
[やぶちゃん注:「ようである」「来そうだ」はママ。]