クビフリン・ソデフリン・シリフリン
目覚まし時計の秒針がチキ…チキ…いいながら動いていないのに4時頃気づく。
山に行くのに5時半には起きなくてはならぬ。
眠ることを断念する。
中途半端な時間である。
今日は山以外何もしないつもりだったが、昨日――僕ことキュビエ管を吐き尽す海鼠――の感じたことを書いておこう。
*
「ソデフリン」の次は「クビフリン」……か
食われるために発情させられる海鼠……
吐臓現象を見るより哀しいね……
まあ
「ドリー」のおぞましさよりは安心ですか、池内先生……
クビフリンとは何か?
(綴りは“kubifrin”でいいのかな? 流石に世界中のどこにも引っかかってこないや)
2008/11/22付「西日本新聞」朝刊より引用する。
《引用開始》
ナマコ量産可能に 九大教授のグループ ホルモンで産卵誘発
2008年11月22日 00:12
九州大学農学研究院の吉国通庸(みちやす)教授を代表とする研究グループは21日、マナマコの生殖行動を誘発する人工の神経ホルモン精製に成功したと発表した。中国で高級食材として乾燥ナマコの需要が拡大し、国産マナマコの輸出額が年々急増する中、資源の管理が課題となっていた。この神経ホルモンを使えば、低コストで安定した大量生産が可能という。
研究グループによると、従来のマナマコ養殖は、温めた海水に漬けて紫外線に当て、自然な放卵を待つ方法だが、産卵の誘発効果は低く、大量のマナマコや大きな設備が必要だった。
グループは、マナマコの神経組織から精巣や卵巣に働き掛けて生殖行動を誘発する神経ホルモンを抽出し、構造を解明。放卵・放精時に首を振るような行動をすることにちなんで、そのホルモンを「クビフリン」と名付け、化学合成に成功した。クビフリンを繁殖期のマナマコに一定の体内濃度まで注射すると、約1時間で精子や卵子を放出することを実証試験で確認したという。
この方法を用いれば、従来はマナマコ3000‐4000匹を使って得ていた受精卵の量が十数匹で取得可能で、1匹当たりの注射コストも十数円の安価ですむ。
貿易統計によると、乾燥ナマコの2007年輸出額は約167億円で、04年の3倍超。吉国教授は「受精卵の飼育に課題が残るものの、養殖は大幅に効率化できる」と話す。同大は12月、生産関係者を対象に技術講習会を開く。
《引用終わり》
ソデフリンとは何か? ついでにシリフリンも。
有尾両生類の研究家Dr. Grumman氏のサイトの「Dr. Grummanの最新情報」より引用させて戴く。ここにはソデフリンの塩基配列も掲げられている。素晴らしい!
《引用開始》
sodefrin(ソデフリン)
今回、これまでいわれていたニホンイモリ(Cynops pyrrhogaster)の性フェロモンであるsodefrin(ソデフリン)の前駆体遺伝子が早稲田大学のIwata,T.らによって報告された。C. pyrrhogaster から1364 bp、189アミノ酸のsodefrin precursor (Gene Bank: AJ245955)、シリケンイモリ(C. ensicauda)からは1339 bp、192アミノ酸のsilefrin(シリフリン) (sodefrin-like) precursor (Gene Bank: AJ245956)が分離解析された。C. pyrrhogaster は千葉県産、またC. ensicauda は沖縄県産のC. ensicauda popei(オキナワシリケンイモリ)を用いた。このデーターをもとに筆者が行ったDNA解析ソフトでの解析結果は下に示す。前駆体のホモロジーは以外に低くDNAレベルで90%、アミノ酸レベルで81%。sodefrin は10個のアミノ酸からなるSIPSKDALLK で silefrin は SILSKDAQLK でホモロジーは80%である。それぞれはそれぞれの種にのみ特異的に作用するとしている。このソデフリンは脊椎動物で初めて単離されたペプチドフェロモンである。 最近まで亜種の関係とされていたこの2種においてもフェロモンはかなり分化していたことになる。これは下記に示したオーストラリア産のMagnificent tree frog(和名不明) (Litoria splendida)のオスから採られたsplendipherin と同様である。この遺伝子の解析でもしかしたらニホンイモリの地域個体群の差が現れるかもしれない。 ちなみにソデフリンは袖を振って相手を誘うという意味。これは「万葉集第一巻:茜(あかね)さす紫野行き」に出てくる額田王の作で「茜(あかね)さす紫野行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖振る」の中で額田王の前の夫である大海人皇子が袖を振っている様をたしなめている場面から採って「袖振りん」と命名された。つまりオスがメスに対してシッポを振って求愛している時に出すフェロモンである。シリフリンは「尻振りん」ではなく、最初のアミノ酸がSILで始まるため。
《引用終わり》
ちなみに、気が向く方は僕の「和漢三才圖會 卷第四十五 龍蛇部 龍類 蛇類」にある「蠑螈」(いもり)の注なども御笑覧あれ。そこでは以前に
『ちなみに平凡社1996年刊の千石正一他編集になる「日本動物大百科5 両生類・爬虫類・軟骨魚類」の「イモリ類」の項に♂の総排泄腔からの内側の毛様突起から放出される♀を誘惑するフェロモンについて記載し、『最近このフェロモンは、腹部肛門腺から分泌されるアミノ酸10個からなるイモリ独特のタンパク質であることがわかり、万葉集にある額田王(ぬかたのおおきみ)の歌「茜さす紫野行き標野行き野守は見づや君が袖振る」にちなんで、ソデフリンと名づけられた。』(記号の一部を私のページに合わせて換えた)とある。やっちゃったな~あって感じ「総排泄腔」「腹部肛門腺」からの分泌は額田王が如何にも顔を顰めそうな命名、ソデフリンsodefrin、でもこれは何でも脊椎動物で初めて単離されたペプチド・フェロモンなんだそうだ。』
てな感想を書いていた。