春が来る 尾形亀之助
春が来る
(服と帽子が欲しい)
私は酒ばかり飲んでゐたので
このひと月は何もしないでしまつた
二月は二十八日でお終ひになつてゐた
*
(太平洋詩人第二巻第四巻 昭和2(1927)年4月発行)
[やぶちゃん注:昭和2(1927)年は通常年で、翌昭和3(1928)年が閏年であった。推定であるが、この二月前後に吉行あぐりへの一方的な恋愛感情の高揚があったものと思われる(本作発表の4月には底本年譜によれば『ある女性への思慕やみがたく、信州上諏訪に約二週間の傷心旅行』とある。初出の編者による「太平洋詩人第二巻第四巻」はママ。「第四巻」の誤植でなければ、号数表記が変更され、二段階の巻数表記になったものか。]