嵐のおばさん 尾形亀之助
ま黒に曇つた空から
嵐のおばさんがすたすた息を切らして
このまちに入つて来た
黒い短い腰巻が
びつしよりぬれてひらひらと風に吹かれ
男のようなばあさんのももにからまりついてゐる
赤髪をぼさぼさたばねた
やせ顔の気狂ひばあさんだ
あごを突き出し斜に空を見ながら
少しばかり腰をまげて
とりとめもないことを口走る
すぐ
あとからのひつそりとした
お寺臭いたそがれに押されて
そそくさと行つてしもふ
けもののようなばあさんだ
嵐のあとだ
(一九二二、八)
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(玄土第三巻第十二号 大正11(1922)年12月発行)
[やぶちゃん注:傍点「ヽ」は下線に代えた。「ような」「しもふ」はママ。]

